夜の行方
木立 悟






見えない夜の身代わりに
川は蒼く蒼くなり
金いろの径を従えて
海へ海へ落ちてゆく


けだものは居る
けだものは居ない
曇の十字
光の前の小さな羽


隙間を満たす暗がりに
堕ちた星は溶け込んで
巨きく双つのまばたきをする
居ない夜の標のように


奥の奥まで滴は到き
涙となって戻り来る
赤と黒のふちどりの目が
黒の森から見つめ返す


けだものは来る
けだものは来ない
眠りつづけるものたちの足踏み
源の分からない熱 音 色


見えない夜が見えてくる頃
朝はふいに現われる
荒んだ光の腕をひらき
命なき土を傷つける


明るさの下 灯はまばゆく
影は薄く高みを覆う
いつか帰る夜のために
氷は丘に咲きつづける


























自由詩 夜の行方 Copyright 木立 悟 2015-12-16 19:43:18
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