夜の行方
木立 悟
見えない夜の身代わりに
川は蒼く蒼くなり
金いろの径を従えて
海へ海へ落ちてゆく
けだものは居る
けだものは居ない
曇の十字
光の前の小さな羽
隙間を満たす暗がりに
堕ちた星は溶け込んで
巨きく双つのまばたきをする
居ない夜の標のように
奥の奥まで滴は到き
涙となって戻り来る
赤と黒のふちどりの目が
黒の森から見つめ返す
けだものは来る
けだものは来ない
眠りつづけるものたちの足踏み
源の分からない熱 音 色
見えない夜が見えてくる頃
朝はふいに現われる
荒んだ光の腕をひらき
命なき土を傷つける
明るさの下 灯はまばゆく
影は薄く高みを覆う
いつか帰る夜のために
氷は丘に咲きつづける