孤独
ベンジャミン

外は雨
灰色の壁にカーテンがもたれる
裏に隠した影に「わたし」を探す
探す
見つける
爪痕のようなキズ
記憶を見つめる
何年か前に患った病
真夜中の病室は6人の病人よりも暗い
けれど騒がしい
騒がしくて救われる
一人がうめき声をあげれば
みな真似をする
生きていますよ と
夜が足踏みをするから
いつの間にか寝てしまう
寝ている人を起こしはしない
死んでいないからいいのだ
言葉を忘れないように本を読んだ
言葉は覚えていても中身を忘れている
言葉の中身だ
「孤独」という言葉の中身は何であったか
 孤独・・・
 孤独・・・ と
呟いてみる
爪痕のようなキズに
爪をたててみる
また
記憶が湧いてくる
病室のベッドの下には
自分の物ではないスリッパがあった
誰も履かない
履く人など居ないのに
重さに耐えかねたような形をしている
点滴の音が
肌に食い込んでいる
混ざってゆくのがわかる
手首を眺めて
傷痕を探す
見当たらない
過去だ
ただの記憶だ
静かだ
爪痕のようなキズを
引っ掻いてみる
カリ カリリ
音が剥がれて
驚いてあたりを見回す
部屋の戸が閉まっている
誰が閉めたろうか
カーテンを
誰が縛ったろうか
爪痕のようなキズを
誰がつけたろうか

誰が・・・
誰が・・・

見つけるだろうか





自由詩 孤独 Copyright ベンジャミン 2005-02-19 13:47:33
notebook Home 戻る