記録者
ヒヤシンス


 風になびく黒髪があなたの横顔を隠す。
 あなたは細い指で優しくその髪を撫でる。
 そんな仕草が愛おしくて私は泣いた。
 愛情があなたの存在そのものになった。

 あなたは絵画に描かれた娼婦に似ていた。
 湯浴みする娼婦は私の心で生きていた。
 凛とした姿は私の胸を強く打った。
 絵画は私の存在における道標になった。

 あなたと出会い、私は知った。
 寄る辺ない者の優しい心。
 悲しみを知る本来の心。

 私は記憶を記録する者であった。
 彼方を流れる風を聞き、人々の目を見つめる。
 静けさに溶けてゆく存在の在り処を探しながら。


自由詩 記録者 Copyright ヒヤシンス 2015-12-13 06:39:44
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