記録者
ヒヤシンス
風になびく黒髪があなたの横顔を隠す。
あなたは細い指で優しくその髪を撫でる。
そんな仕草が愛おしくて私は泣いた。
愛情があなたの存在そのものになった。
あなたは絵画に描かれた娼婦に似ていた。
湯浴みする娼婦は私の心で生きていた。
凛とした姿は私の胸を強く打った。
絵画は私の存在における道標になった。
あなたと出会い、私は知った。
寄る辺ない者の優しい心。
悲しみを知る本来の心。
私は記憶を記録する者であった。
彼方を流れる風を聞き、人々の目を見つめる。
静けさに溶けてゆく存在の在り処を探しながら。