マジック
ただのみきや

太陽が低く輝いている
濡れたアスファルトがそれを照り返し
わたしは目を細めた
光の針がどこまでも伸びて
小さな瞳孔から苦も無く入り
網膜を火の海にした
百メートルほど先を
炭のように黒い人影が横切って行く
何一つ美しいと思えるものが無い場所で
何もかもが美しく茫洋としていた
道の先が永遠へと溶け込むように


光のマジックか
それとも心?
あるいは言葉の――


世界と言葉の間には心がある
心には永遠がある


心と世界の間には言葉がある
言葉には創造がある


言葉と心の間には世界がる
世界には多様性(あるいは分裂)がある


太陽が低く輝いている
そこまで来ている
夜は愛人のように訪れて
光の愛撫を忘れさせる




               《マジック:2015年12月11日》









自由詩 マジック Copyright ただのみきや 2015-12-12 15:13:24
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