レミングス
TAT



























レミングスは海を目指す



ぞろぞろと一列に並んで









崖から海に飛び込む順番を待ってる
















なんと奇妙な生態だろうか






























ぼくらは一列に並んでポップコーンを買う行列を作ってる

ぼくらは一列に並んで新規公開株を売ってもらう抽選権を欲しがってる

ぼくらは一列に並んでレジを打ってもらう順番を待ってる

ぼくらは一列に並んで新型のiPhoneを手に入れる

ぼくらは一列に並んで殺される順番を待ってる

ぼくらは一列に並んで移民の登録窓口が開くのを待ってる

ぼくらは一列に並んで単体女優の顔に向かって精子を射精する

ぼくらは一列に並んでマイナンバーの交付を受ける

ぼくらは一列に並んで大戦に送り出される

ぼくらは一列に並んで分譲マンションのはずれくじを引く

ぼくらは一列に並んでATMからお金をおろす

ぼくらは一列に並んで自分の現代詩が誰かに評価されるのを待ってる

ぼくらは一列に並んでレクサスのローンを組む

ぼくらは一列に並んで神経科のカウンセリングを受ける

ぼくらは一列に並んで帰って来る子供を門の外で待つ

ぼくらは一列に並んで住民税を納付する

ぼくらは一列に並んで巡回するピカソの原画を拝む

ぼくらは一列に並んでテーブル席の順番を待ってる

ぼくらは一列に並んで霊園の空きを待ってる














寓話のような人生を愛せないなら












別に愛さなくても差し支えないんだよと前の男が教えてくれた











それをそのまま後ろの女に教えてやる





人生を愛さなくてもいいらしいよと













女はそれを更に後ろの子供に耳打ちする








人生を愛するなと














































月の夜も星の夜も闇の夜も













時計の針は進むのを止めない











それは何故かというと












ぼくらが時計を発明したからだ
















































自由詩 レミングス Copyright TAT 2015-12-11 18:45:03
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