かんな




紅茶をテイスティングするあの男性の、指先にとまるシルバーのリング
ティーカップに注いだ海がどんどんぬくもりを帯びていくという嘘の話
男性の指に抱かれたいとおもう夕べに私の海はどんどんしょっぱくなる
足掻いている日々にいつ喘いだのかわからない電話を待っているのです
クジラは白くひとつの雲のように落ちていくから好きなんですと言った
「君は溺れているようだね、毎日呼吸をしながら」ああ抱いてその指で
廃盤になったタバコを吸うような行為はできないよ、くすくすと笑った
使用期限切れの香水のように私を扱うのですね、いやそれ程綺麗でない
冷笑を続ける男性に紅茶を一杯、ダージリンのセカンドフラッシュはい
かがですか、抽出して瓶詰めにしコルク栓をいたしたものです、どうぞ






自由詩Copyright かんな 2015-12-11 16:13:02
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