夜のかけら
木立 悟




空から落ちた
無数の楽器が
土の上で砕けたまま
鳴らそうとした音を鳴らしつづける


顔を撫でては去ってゆく
浜辺に打ち上げられた
硝子片に満ちた死骸から
熱は羽のように押し寄せる


糸くずが埋もれた白い壁に
たくさんの鈴が浮かんでは消える
傾きと気まぐれにまかせ
空を揺する何ものかが居る


黒い樹々の上の星
繋がれることのないひとつの星
曇が造る明るい森に
立ちつくすたましい


葉の失い枝に
灯の葉が積もり
月をわずかに隠している
忘れられた街への道すじ


小さなものらの音がする
風に運ばれ ぶつかり 踏まれ
水に流され 底に迷い
遠くを遠くに照らしつづける


光は動く
音を 硝子を
そのままを抄う手のひらに
光はこぼれ 刺さり あふれる





















自由詩 夜のかけら Copyright 木立 悟 2015-12-11 09:57:05
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