落下
tinsukou


セックスのあとで
歌を 歌ってくれたひとがいたの
シャツを羽織って
煙草をくわえながら

都会の真ん中
小さな
男のひとの部屋
壁や布団に染み付いた
数年間
煙草の吸い殻
立てかけたギター
玄関のアルコールの空き瓶

すきって言ったら
嘘くさいかな
重ねた
体と体の間に
いくつもの言葉
口にだしたいけれど
わたしが言うと
価値を失っていくものばかりだ

いつか終わるって
知ってしまったから
あなたは
わたしの思い出になろうとしてる?

カーテンの向こうでは
街が 夕暮れる
隙間から
カラスの鳴き声を聞いた

こんな都会の真ん中
取り残されたような部屋で

背中
ぬるい指先
落ちていく












自由詩 落下 Copyright tinsukou 2015-12-05 22:38:07
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