にゃーにゃー
たちばな まこと


コンビニの駐車場と壁沿いの喫煙所の側で
畑とその向こうのアパートを背景に
ひなたぼっこをしている2匹
にゃー
にゃー
細く甘えた声で私たちを見上げる
にゃーっていってるね
2歳の子の目尻が下がる

2匹に挨拶をして帰ろうと
お茶菓子をぶら下げてしゃがみこむと
にゃー
にゃー
白っぽいのが立ち上がり からだをひざにこすりつける
きみは慣れてるねー、となでまわして
なでてって言ってるよ、と2歳の子の背中を押す
おそるおそる小さい手でなでる
にゃー
にゃー
キジ白っぽいのもなでる
にゃー
遠慮がちだけれどうれしそうで

にゃーにゃーたちはここで
コンビニの店員さんや お客さんや 学校帰りの子どもたちや 近所の人たちに
かわいがられているのかしら
ぬくもりはいいよ
金色の粉が 休日の午後の太陽を乱反射させて降りかかる
ように
私たちは ぬくもりを抱きしめることが出来る

ぬくもりは
分かち合うもので 奪い合うものじゃない
少し気が立って誰かを傷付けてしまったり
喧嘩をしてしまったりしても
2歳の時と同じやり方で
ごめんなさい、いいよ、と抱き合えばいい
仕返しなんてしないことだよ
今日の私は胸が痛いから
にゃー
にゃー
きみたちの声が沁みてしまう
仕返しの繰り返しがまたニュースになっていて
みんな悲しんでいる
悲しくて
悲しみが怒りになって 怒りが憎しみになって
憎しみだけが独り歩きをする
そしてふくらんでいく
行き場を間違った憎しみが
彼方此方で起爆し
空からも落ちてくる

ねえ にゃーにゃー
聴いてくれてありがとう
私は
この子たちを愛しているだけなの
毎日をささやかなぬくもりで満たしたいだけなの
ほんとうはみんなそうなんだよ
こんな気持ちを集めて ふくらませて 空に託したら
色とりどりの綿菓子のように降らせたい
甘いね、美味しいね、うれしいね、って
世界を
ささやかなぬくもりで満たせたら
いいのにね

にゃー
にゃー





自由詩 にゃーにゃー Copyright たちばな まこと 2015-12-02 00:21:56
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