狼煙
為平 澪

小さな町は大きな街に憧れて 
いつも大きな街の姿をテレビで見ていた

小さな町は大きな街が大好きだったけど
大きな街に行くと自分がいかに 
小さな町であるか知ってしまうことを恐れて
大きな街の悪口を 広報や回覧板で回した

小さな町が書いた小さな文字の注意事項は
いつも大きな街の悪口ばかりで
大きな記事にしたのは 小さな町の良い所

小さな町に住む人は 大きな街には行きたがらない
その町の公共機関という人たちが 口を揃えて
小さな町のことを「大きな街」と
大口たたいて大きな声で
目には映らないようにしていたから

大きな街と思っている人々の
造り上げたピラミッドの王様だけが
昼間に頭を抱え 夜にタバコをゆっくりふかす
(さて、この町を明日にはどんなケムリにまいてやろうか)と。

キセルから浮かび上がる巨大な街が 闇の中に
どろん、と現れ 誰にも知れずに消えてゆく


自由詩 狼煙 Copyright 為平 澪 2015-11-30 20:41:14
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