シンクロニシティ
由木名緒美

人の営みの狭間を縫って
悠久の経を信条とした河に
明かりの灯った小さな神輿が流れ
そのひとつひとつに
幼子が蹲っている
世界の何たるかを知らず
それでこそそべてを悟ったような面持ちで
もの問いたげなそのひとみ
真っ白な産着を悟りの晴れ着のごとく
すべらかな肌にまとっている

あらゆる星々は自律性を保っているが
今朝 轢殺された一匹の猫が
誠意の弔い人に埋葬されるまで
空の骸は惜しむように路地を駆ける
三十数度の熱をまとう恒温動物も
岩肌のような爬虫類も
朝陽を浴びれば同様に染まる
カテゴライズなど無用な装飾なのだ

赤い唇の錦鯉が
油蝉を誘惑する
あなたが私と結ばれたとて
鏡は塵ほども瞬かない
だから貴石を指に嵌めて
呼び込む光が選択の繭を証明するよう願うのです

血の通った足並みが止まる時
蟻塚のような街並みは理想の集約を産み落とす
開け放たれたすべての窓が砕ける程のシンクロノシティを
震撼させる一瞬の景観に
裸身の恍惚を捧げられたなら





自由詩 シンクロニシティ Copyright 由木名緒美 2015-11-29 00:58:22
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