或る亡命者
レタス

甘やかな
旋律のピアニストは
何時までも恋という幻想に抱かれていた

その指先の爪は何処までもピンクに輝き
甘い囁きは
彼女を魅了した

そして
彼は応えた
ぼくは孤独を埋めることはできないと

彼はただ
音色に魅せられた魔術師だけの存在だった

甘く破綻する旋律のなかで
かれは自慰を止めることができなかった

美しさはナルシスの中に閉じ込められてゆく


自由詩 或る亡命者 Copyright レタス 2015-11-28 20:11:02
notebook Home 戻る