ひびき
木立 悟




夜から朝へと染まる荒れ野が
蒼と白にじっとしている
遠く刃物の音をたて
雲はひとつずつ過ぎてゆく


鉄が鉄を撫でている
蒼と白は寄りそって聴く
凍えてゆく声
あたたまる声
からくりを持たないからくりの声


見えない約束が
浜辺に座り 波を見ている
雲の刃の光を見ている
波の端は荒れ野に至り
ふたつのざわめきにかがやいてゆく


突き出た岩は
残された文字
土に洗われ
残された意志
幾つもの野を過ぎ
つづきゆく意志


誰かを撲った手首から
明けゆく空へと立ち昇る白
見上げるまなざしに歌は降るのに
何も映さず流れ落ちる
あふれてはあふれては流れ落ちる


歌は響いてゆくだろう
怒りと恐れに満ちるだろう
苦しみと悔やみに満ちるだろう
水たまりの道は湖になり
悲しみの行方を問うだろう
歩む背の行方を問うだろう


寄りそうままに眠る色たち
重なる鉄を過ぎゆく音たち
波へとつづく岩の影は
たなびく光にたなびく影は
異なる朝の文字となり
見えない羽の群れを放ち
見えない約束を書きしるす










自由詩 ひびき Copyright 木立 悟 2005-02-18 17:34:31
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