天秤
為平 澪

何も持たなかったはずなのに 多分荷物は重くて
何を詰め込んだかわからないのに 大切で
手放せないまま 逃げるように出てきた都会

何をしたかったのか 私の頭の標識は
真っ白に作り上げた 大きな矢印が看板
迷って 転んで キョロキョロした顔を向けて
やっとの思いで前を向いたら 舌打ちされる

守るものは自分、ではなく、
自分の正直さ、というものだと
両腕で抱えてみると 我儘、と、傲慢に
早変わりする 人の秤

        ※

何も持てなかったはずなのに
往復切符を買ってしまう臆病者
(その理由を、聞かないでください。)

スマートフォンを 握り続ける
私の当てにならない アクセス先
(その場所を、見つけないでください。)

街には人がいないのだよと マネキンたちが
スマートなスタイルで会話して 私を見下す

ポケットの右側にいれた十字架とはぐれて 
左側のコインに見捨てられた日
身体ごとアスファルトの中に飛び込もうとした夕暮れ

ふるえるように叱ってくれたのは
ルール位置から遠く離れた、壊れた家の
弱さと優しさに泣くしかできない 私の両親


自由詩 天秤 Copyright 為平 澪 2015-11-27 22:40:20
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