たいせつの歌
梅昆布茶

たいせつをさがしている
大袈裟でもなく控えすぎず弾力をもつもの

空は低いが僕の中にそれをおしあげる力があるだろうか
誰も風化しない星々も変化しないのではちょっと困るのだ

粘土のように塑性をもった背骨を
あるいは硬骨魚の外郭をちっちゃな鑿で削りながら

たいせつを温存してちょっと迷ったが
いいのだ背もたれがほしかっただけなんだと

もう高度のひくいグライダーはいつも隙間にはさまってしまう
呼吸するちいさな地図を広げて世界をさくさくとあるこう

ティンカーベルはそっとほほえんでタクトを放り投げると
たいせつをおりたたんでちっちゃな胸の谷間に挟んだ

しゃがみ込んで蟻の行列を眺めているおかっぱの女の子
いっしょにしゃがみ込んでももうすでに焦点があわない齢
唯々彼女の分析的な感想に感嘆する

柔らかな科学はやさしい生物学を
かあちゃんあんたの表情かたいぜ
もうちょっとゆとりもちなね
胎児がそっと歌う

たいせつを忘れている
機能のバス停できみとかわしたジョークさえもなくして
もう結婚指輪はどこかへいってしまった

いつも終局はさびしい
なんとか収斂させなければならないから

言葉はいつかおわるもので
ぼくもじきにおわるもので

たいせつも終わってしまうが
終わらせないひとがかならず何処かしら居るもので

いつもそんなひとと友達だったようなきがするので

そんな人生をこれからも選ぼうとおもっているのです















自由詩 たいせつの歌 Copyright 梅昆布茶 2015-11-27 13:26:12
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