祈りの燈火
秋也
墜落する戦闘機
中に人が乗っている
中にきっと人が乗っている
その人はお父さんお母さんがいて
尊敬するお兄さんお姉さんがいたかもしれない
可愛がっていた弟妹がいたかもしれない
撃墜された戦闘機
愛する恋人
愛する子供
さよならは言えず
写真の人となる
警告
空域侵犯
繰り返される警告
秘密の空域侵犯
空中で燃え散る
空から焼けて鉄を降らし落ちて失う
下の人も武器を持っていて
上の人も武器を降らす
下の人は凶悪な思想で
上の人はまっとうな神を信じ否はない
下の武器をもたない子供を抱く母親
下のサッカーボールが宝物の少年
下のモスクで我が日々に感謝の祈りを捧げる老人
テロリストとともに一律もろともに
爆ぜ失う
あじと学校病院
命が魂が世界のどこかでたくさんたくさん無くなっていく
「神よ偉大なり」
左も右も真ん中も
異常も正常も成熟も
僕らは掲げた旗を燃やし続けたい
みんなサディストでありマゾヒスト
大きくなればなるほど
皆で決めたことが守れないのさ
自分で決めたことも守れないんだから当然か
叱ってくれる先生もいない
いるのは誉めて誉めて
いかなる時もいつか許してくれる神様だけ
透明で見えないけど
大丈夫
爆弾も飛行機も銃撃されたサッカースタジアムも遠ければ
無明無音さ
硝煙破片爆音銃声血の匂い
そこにいなければいい
目の前になければ透明なのだから
空域海域軍事基地
強くて速くてスイッチ一つ
決められたことが守れないなら
不利なことは決めなければいい
決まっていない内に行動すればいい
秘密で素敵な活動
多くの人が平和を願い
多くの人がなんとかしようと模索し
多くの人が逃げ出し
子供が海に落ち
それでも多くの人が奪い合い
合法的に略奪搾取
非合法に盗られたモノを獲り返す
失うと戻らないモノを大量に消費し
多くの人が貧困する
多くの人が透明になる
僕も悲しいけどその一人だ
近しい友を亡くして泣けるけれど
会ったこともない子供や老人じゃ涙は落とせない
僕も君もあなたも
どの家族も
遠ければ透明だ
空で散る
劫火の一部が写され
感じた
朗報だ
上を飛ぶ爆撃機は最新式
自慢のステレス無人機
つまり上は死なない
人が乗っていないからね
ほら一人救えた
灯りを照らせ
灯りを照らせ
透明なんかじゃない
ここに人がいるんだ
ここに命と笑顔が今はまだある
どんなに貧しくどんなに過酷でも
大切な人と他者のために優しい蝋燭の灯りをともせ