石を歩く
木立 悟







墓地と背
鎖を手に
見えない声
遠い灰の音


雨が
雨のための径を通り
去ってゆく
傘の無い街を
照らす幻日


呑まれゆくものに
小さなものらに人を見るとき
泪ではない泪に頬を焼くとき
鈍の子を抱こうとうつむくとき


雪解け水が坂を下りる
向かい合う双つの径の
片方だけを人はゆく
水と影を避けようとして
冷たい風にさらされてゆく


誰かの放り投げた実が
窓から入り蝶に変わる
薄く呼吸する灰の胸
屋根の上をすぎてゆく


雨と雨の会話のはざま
近く遠い鈍の指
つまむように なぞるように
触れることなく触れながら
石の背中を歩いてゆく























自由詩 石を歩く Copyright 木立 悟 2015-11-23 16:59:58
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