ジョバンニ幻想
レタス


あの路地を曲がれば
糸杉の垣根がみえてくる
トマトを見つめる匂いのなかで
ぼくは牛乳を買ってくるのを忘れた
たどった路を戻りながら
牛乳 牛乳とつぶやいた

こんな時間に牛乳屋はやっていないはずなのに
ぼくは小走りで牛乳屋を目指した
糸杉たちに挨拶をして
駆ける街角を過ぎ
文具店のキラキラした鉛筆立てを垣間見る
欲しかった硝子の鉛筆立てが頬笑んでいた

ぼくは母のために牛乳を買わなければならない
早く 早く
ぼくは暗くなった街を走り抜けた

幼い頃の記憶がいまも鳴り響く


自由詩 ジョバンニ幻想 Copyright レタス 2015-11-17 22:49:32
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