散文・詩とは、
w.tsubaki

詩とは日常のなかの
些細な疑問であったり 好奇心である

たとえば植物の種子のように
風にさらわれ二度ともどらないもの
炭酸水のように底のほうから発生して舞いあがり
はじけて霧散してしまう泡だったりする
ひどくフワフワとして
実体があるのに実体がないような か弱いものに思えた

さらに大人になるにつれ
失われてゆくものがある
いえ、鈍感になっていくこの心が
のれんに腕押しとばかりに
簡単に通過させてしまうのです

あるときふと立ち止まった時
昨日まで聴こえていなかった 風の唄を聴いた
昨日まで見えていなかった
首筋をやさしく撫でる陽光の輪郭をとらえた
だけどそれは
近所の犬のあたまを撫でていく手のひらのように気まぐれで
すぐに去っていってしまう
それが突然こわくなって
通りすぎるその腕に追い縋ってつかんだ

もちろん自分にひと所にとどめておく力などなく
すり抜けてゆくのだけれども
つかんだ手のひらに 微かにのこった余韻を掻き集め
失くさないように箱のなかにいれて鍵をかけたのだ

詩とは、
わたしにとっての詩とは
ひどく子供じみた身勝手な拘束だった


自由詩 散文・詩とは、 Copyright w.tsubaki 2015-11-17 12:43:07
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