調理
春日線香

まな板にびっしり生えたふじつぼを
包丁でこそぎ落としていく
刃を横に寝かせて
柔肌からかさぶたを剥ぐように
緑色のふじつぼを剥いでやる
少しの抵抗と悲鳴があったかと思えば
ぽろりと流しに落ちて
硬かったそれは溶けて排水口に消える
下水で繁殖するといけないから
あとで沸かした熱湯を注いでやろう
ふじつぼを剥がし終われば
まな板はまったくきれいなもの
そこに鯵をそっと横たえて
ぜいごと頭を切り離す
膨らんだ腹に包丁を突き立てて開き
刃で黒ずんだ内臓をかき出す
水で血合いを流してやれば
最初からそうであったように清潔で
切り離した頭も
きれいに捌いてくれてありがとう
と笑っている


自由詩 調理 Copyright 春日線香 2015-11-16 20:18:46
notebook Home 戻る  過去 未来