霜月の秘密
あおば

               151115

ネアンデルタール人の存在感が増したのは
発掘した人骨が他の旧人類とは比較できないほど多く
現生人類とも混血したともしないとも言われる隣人は
700万年ともいえる人類史の中で最後の枝分かれとなった
懐かしいいとこなのかも知れない
消えていく運命にある本年もあと2ヶ月足らず
霜が降るのも真近い11月は753を除くと紅葉の美しさに
晩秋の光を愛でる去りゆくものの鷹揚な豊かさすら感じる
このネアンデルタール人を彷彿とする豊かな体格の霜月の後姿
現生人類よりもかっこいいと思う人も居るかもしれない
髪も髭も伸ばしたまま毛皮の服を着て霜月をのそのそ歩いたら
ネアンデルタール人よりもみすぼらしい人が殆どであろう
かように、現生人類がスマートに見えるのは衣装や調髪、
化粧などが大いに力を貸しているのだと厳格な師走が審判を下す
直立歩行を続ける限り勝ち目は無いと自覚している我らは
自動運転カーにふんぞり返り、空港から空港へと飛び回り
世界中に溢れるようになった
これが現在の状況である
それに対するネアンデルタール人は
慎ましい生存の果てに誰にも知られずに姿を隠した
どちらが、真の英知の持ち主かはいわずもがなであり
森林を絶滅して文明を誕生させた我らの先祖はそこまで
予知していなかったのは明らかで、今朝の新聞にもその副作用が
忌まわしい副作用が大きく一面を飾っていた
来るべき師走の審判を霜月は慎ましく受け入れ冬への準備を進めている


初出「即興ゴルコンダ(仮)」
  http://golconda.bbs.fc2.com/
  タイトルは、サエさん。





自由詩 霜月の秘密 Copyright あおば 2015-11-15 20:28:06
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