ひとつ たなびく
木立 悟






雨に映る音たちが
雨の後も浮かびつづけ
夜の片方を震わせて
指の冷たさの上に立つ


ひとしずくはひとしずく
守れなかった約束に
目が覚めては手をひらき
重く冷たい軌跡を聴く


爪のはざまの夜の痛み
生まれては消える泡の痛み
音のかたちに連なる街を
越えては消える指の痛み


雨の筒のなかの声
灯に照らされ歌になり
空の水を動く影
ところどころ消える影


捨てるように腕を投げ出し
曇の動きを見つめている
指に降り立つものたちが
暗がりの風に埋もれゆく


白の痛みを目ですくい
こぼし すくい
こぼし こぼし
夜へと沈む音を呑む


窓を掴もうとして掴めずに
たなびくばかりの指を伸ばし
それでも何かを掴もうとして
奏でられぬものに触れてゆく
























自由詩 ひとつ たなびく Copyright 木立 悟 2015-11-12 22:30:38
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