歩く羽
木立 悟





時間を切り取り
器の内の水の上に置く
ゆうるりと巡る光に
指を ひたす


失くした大きさと
後に得た小ささ
つりあい無くつりあう径を
風が 静かに揺らしている


夜はすぐ近くのように遠く
霧を水に溶かしている
視線は咲かない声
やがて 満ちる


岩の街を
歩いてゆく鳥
背負った時計は皆
むらさきを指している


削り取られた岩のかたわら
刃の羽の地使が居て
応えのない声を拾い集め
径端の花に撒いてゆく


黄緑を回る炎の手
空の角を曲がる雲
割れた色の幾つかを
降らせ降らせ 降らせつづける


暗がりの内を無数に走る
光ではない白い線
撓み 途切れ ふたたびつながり
暗がりを未明に導いてゆく


巡る 巡る
時計に染まり
歩みつづけるものの見る先
飛べないものたちすべての黙示


過ぎたものも過ぎるものも
居ないものも居るものも
傷を刻み 刻みながら
そこに重なり 響きつづける

























自由詩 歩く羽 Copyright 木立 悟 2015-11-07 09:18:00
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