僕は寝ているふりをした
阿ト理恵


あの花の名前を知らないならさっさと調べればいいと思うし、台所で話しかけたかったらさっさと話しかければいいし、もたもたしないでちゃっちゃっとやっちゃいなよって思うのよ、ときみはラガービールを片手にフライパンをぶんぶんゆらす。僕はそんなきみの口にガムテープを貼りたくなってしまうんだ、でも、寝ているふりをするのが一番いいかなって。きみが草むしりしない理由、切り花を買わない理由、ディズニーランドが嫌いな理由、ほんとはメルヘンをどんなに好きかとか僕をなんとなく好きだとか僕だけが知ってることをきみはまだ知らない。



自由詩 僕は寝ているふりをした Copyright 阿ト理恵 2015-11-05 15:33:09
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