窓枠
高橋良幸

小平市の住宅街でバリバリと音が鳴り
とつぜん、目の前の住宅が取り壊された
私は三か月前から仮の住まいを持つだけなので
家が壊されるこまかな事情は知らず
事情を知らないゆえ
その家は突然、取り壊されたのだった
数日にわたって、取り壊された

ある夜のこと
満月が見えた
窓枠の向こうに
窓の、外側から
昇り始めの月が
少しだけ残る壁に支えられて
窓枠の向こうに

僕は覚えておくといい
壊されそうになったときに
いつも見えない場所から月が見えるはずだから

夜をまたいで
幸い雨は降らず
しまいにはきれいに更地になった
一画には
外を眺める新しい窓枠ができるだろう


自由詩 窓枠 Copyright 高橋良幸 2015-11-03 20:48:44
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