扉
あおい満月
鏡のなかの、
少女のままの彼女に
メールをする。
液晶の水面は、
音もたてずに目を閉じる。
鏡のなかの少女は私だ。
白いワンピースを纏って、
麻栗色のウェーブの髪を風に揺らせて。
いつまでも少女でいたかったから、
満月という名を与えた。
16歳の夏の日。
夢想のなかの青年を抱いた朝。
描いたクロッキー帳に滲んだ想い。
詩を書いていくと決めた二十歳の秋の日から、
いくつもの冬を越えてたどり着いた場所で
出逢えたぬくもりを今は愛している。
それでも、
足を踏み外せば喰われてしまう危うい世界で、
羽根を拡げて飛び立つには力がいる。
求めるよりも、
何も求めない心がほしい。
少女は少女のままで。
私の願いで溢れた、
私の扉には、
たった一つのレスポンスがある。
だだ、たった一つのことばだけで、
どこまでも私ははばたける。