◎地球の代数
由木名緒美

あなたの表情が澄み渡るような青天から
薄暮れの黄色へと変遷する様を
手の平から零れ落ちる砂を見るような非力さで見届け
伏せた瞼に抱き留めていた

もし心臓の代わりに
胸の内に地球が瞬いていたなら
彩とりどりの光が島を照らし
個性の無限を現わし出すだろう

けれど天文学的な数の星々に隠れて
奇跡の球体は今日もひしめく命の信託を一身に受け
老いの螺旋をゆるやかに周回してゆく

今したためる言葉が あなたを繋ぎ止めるとして
歓びは事変のように哀しみを躍らせる
氾濫する幸福に身を浸すには
もうしばしの円熟が必要のようだ

静かな住宅街で 
ただひとつ明かりが灯されたこの部屋は
さながら絶海の孤島のよう
静けさを肺に吸い込み耳を澄ませる

変化は猶予を待たない
ざわめく予感に息を乱しながらも
光の枝々を結ぶ偶像の眼差しに瞬き返して
この胸腔で微笑む地球の回遊に鼓動を預けた




自由詩 ◎地球の代数 Copyright 由木名緒美 2015-11-03 00:29:49
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