待ち合わせ
Seia

急に来た
スパイスのつんとくる
どこから?
たぶん記憶から

わたしはこの匂いを
覚えていて
わたしはこの匂いを
覚えているし 知らなかったりする

それは(十円玉)を
覚えていても
(十円玉)のことを
知らないのとおんなじ

メモ帳に置いていた手を止めて
バタフライストッパーにペンを挿す
レンジは広く構えていたはずだったのに
脇腹から攻められたみたい

からんころんと鳴るもの
きしむドアとセットで
入ってきたあの人の顔を
わたしは知らない

よかった
ひとちがいで
もういちどペンを取る
あるいはペンじゃなかったかもしれない


自由詩 待ち合わせ Copyright Seia 2015-10-31 09:05:03
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