私小説
日々野いずる

じめじめした宇宙を超えて
超特急でやってきた光のような木の葉は
木漏れ日を作りかさかさと
太陽を覆い隠している
その陽に焼けた赤は紅葉もみじのようで

じめじめした界隈を抜けて
出てくる人はこう言う
「意味なんかなかったよ」
それってどういう事なのか解らなかったけれど

陽に透けた紅葉こうよう
虚偽の日に覆い被さり
それってどういう事なのか
つまりそれってどういう事なのかって事なのだけど
なんでもいいって感じでしかなかった自分

わたしはじめじめした世界から飛び出せなくて
どうしてもって言われて残っていたから
思うこともあったのさえ解らなくて
つまり何でも
すべてが
どうにでも
良かって
それでこうなったのだと思う

誰も教えてはくれなかったという甘さが悪い

白塗りになった肌を晒し
指をさされて哂われる
ひどく惨めな思いをしているのに
誰もそれを知らない
誰が白を塗ったって
わたしが白を塗ったのだけど

じめっとした白をひと塗り
ひと塗り重ねて
惨めでいている
それって誰のせいなのか

人に指をさされるのは誰のせい
わたしのせいで
わたしのせいでしかなくて

「意味なんてなかった」それって
抜けた人からすると正しいことなのかもしれない
この世界しかないのだから
これに意味を見出すしかなくて
それってどういう事なのかまるで解らなかったけれど

負の感情はすべて隠し
何にも無かった事になって
明るい未來だけで出来ている世界
そんな世界の明るさを集めている光が
陽になって照らす

木の葉は覆い隠しわたしの頭上に
影を

たまに洩れる光に焼かれる
この場所は
じめじめした苔むした場所


自由詩 私小説 Copyright 日々野いずる 2015-10-30 23:58:15
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