亡き母の想ひ出に
日々野いずる

迷子の放送かけても分からぬ
親猫離れて迷えるの?
迷子 帰れるか分からない
帰る道はどこだろう

その道の先にあった光や闇やそのほかのものも
手さぐりでは触れるはずもなく

だけどそれに安心していた
迷子になるより
ずうっと先が見えるのが
続いていたのは怖かった

ふわふわとした産毛を逆立て
世間を威嚇しても
柔らかな毛が緩衝材となって体をつつみ込む
なだめるように
なぐさめるように

左目と右目と片方ずつ神様に取られた二匹は
お腹いっぱい食べる夢を見て眠る
毎日路上で
帰る場所はきっと無く
空は終わりだけを見届けるのだろう
救いは訪れない

ふわふわとした霧の中に
ミルク色の川があって
香りにつられて飛び込んだ
染み渡るミルクの香りに
安心して片割れの目を閉じ
片割れが一緒に
ミルクに包まれていたらいいと思う

亡き母の想ひ出に
結局は還るのだから


自由詩 亡き母の想ひ出に Copyright 日々野いずる 2015-10-29 22:02:44
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