昼餉(弁当、御握り、イモサラダetc)
あおば

             151029

カレイもヒラメも始めからひらひらと泳ぐのではありません
幼い頃は鯛のように両側に眼があって普通の魚のように
スイスイと泳ぐのです
しかし、長じるに従い、身体が平べったくなり
両側についていた眼がだんだんと近づき片側に並ぶようになります
俗に左ヒラメに右カレイと申しますが、勿論そのようにならないで
左側に眼があるカレイも偶には居ります
なぜそうなるかは、私は調べてないので知りません
ヒラメにもそういう異端魚が居ることと推察しております
今日の夕食はカレイの煮付けでありまして
私は久しぶりに腹の虫が鳴ったのですが
食べられるカレイは二つの眼を閉じたまま
じっとお皿の上に横たわっております
私は箸を持ちいい加減に背中とお腹の中間部をつまみ
力を入れ、彼の筋肉の何割かを引きちぎり
ゆっくりと口に入れ、久しぶりのカレイの味を堪能いたしました
解剖にも似た、箸使いで、食べられそうなところはすべて食べ
残ったのは骨だけと成りました
骨も力を入れて齧れば噛み砕けるのですが
そして骨の髄の味も結構乙なのですが
横で見ている人が居るので、骨を噛み砕くのを
諦めました
ほんとに無駄なく食べられる魚だと感心して
思わず詳細を書き下したのですが
目玉を抉り出して口に入れ噛み砕いた時の姿は
まさに肉食獣であるなと己の姿を思い浮かべたものです
それにしても昼餉とはよく言ったものですが
昼平目とは余り言いません
やはりカレイの方が庶民的でお弁当に相応しいのかなと思うのですが
養殖するのは平目のほうが成長が早いと聞くと少し混乱をいたします
そのうち昼のお弁当にも平目の刺身が付いたりする時代がすぐ傍に控えているようで
カレイを美味しく食べられるのも今のうちだなと
独り言を言ったところ、つり革の横の男がぎょっとしたような顔つきで
隣の車両に向かって行きました
恐らく彼は平目の商品先物取引に手を出していて、慌てて買いに走ったのではないかと邪推するほど終電直近の通勤車両は混んでいて、
疲れも出て不用意な発言をしてしまうことがありますが
お腹が空いて堪らないと黙って下を向いております。



初出「即興ゴルコンダ(仮)」
  http://golconda.bbs.fc2.com/
  タイトルは、ぎわらさん。




自由詩 昼餉(弁当、御握り、イモサラダetc) Copyright あおば 2015-10-29 00:14:53
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