放流
あおい満月

私は緩やかに束縛されている。
色々なものを見ながら聴きながら、
色々なものを見ぬように聴かぬように。
穏やかな強烈さで
目隠しをしているかいなは誰なのか。

私の中心と誰かの中心は、
今でも太い管で繋がれている。
一度は断ち切った事さえあった。
その時の赤い飛沫を覚えている。
繋がるまでに、
私は多くの大きなものを失った。

人はこの腕の世界に居ることを、
牢獄のように見つめるが、
今はおもうこの管が無ければ、
私は何も生み出せなかったと。

夜に濡れて、
眠る腕の管のなかの幾つもの扉には、
鍵がかかっている。
その鍵を知っているのは、
私を取り囲む一本の大樹の風の声。
この樹が死んだら、
私はカオスのなかにいてもわかるだろうか。
刹那の月の安堵と、
海の冷たさに、
溺れてしまうだろう。

私は静かに、
解放されていく。
あたたかなぬくもりにさえ背かれて。
大きな黒い孔のなかへと。



自由詩 放流 Copyright あおい満月 2015-10-28 21:21:20
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