かや刈り
そらの珊瑚

軽トラックの
荷台から
あふれんばかりの、かや
山盛りということはこういうことだ
現役で農作業をされている人が
こんなにも近くにいるということが
無性に嬉しい
今朝スーパーで見かけた車の風景が
私を昔に連れ戻す

かやはね
素手に触れると
手を切るよ
けれど軍手をしたって
その手に切り傷が
出来るのを
わたしは知っている

一日かかって刈ったかやを
父母は蜜柑畑に根元にしきつめた
束ねられたかやたちはほどかれ
そこで一年
肥料となり
木の根をあたため
雑草を防止する仕事をしながら
枯れ草になってゆくのだという
かやの中には空洞があって
土を離れても
息をしているよ

秋のゆうべ
軽トラックから
降り立つ父母の影は長くのび
かやの匂いがした

蜜柑の木は切られて今はない
なかったことにした山は山へかえるだけだろう
人に刈られなかったかやは
誰の手を傷つけることもないし
仕事もしない
ひたすらに天を求め
あふれるばかりにあふれ
季節風にゆれながら
かやであったことを思い出し
あの山を
かやの山にするつもりかもしれない


自由詩 かや刈り Copyright そらの珊瑚 2015-10-26 11:51:46
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