うつくしさ
日々野いずる

青々とした笹のまっさらな
緑の装いをはぎとりながら
ちらりと見せる裸のなまめかしさよ
それは処女の絹肌の真白い脛によく似ている
目が離せずほんのり染まった
美しさとはすべてを飲み込み
抹消するものなのだとそう思った

頭は白く脱色されていき
美しさが塗りかえていった すべからく、すべてを

塗りかえたそれは無かった事になるのだろうか
誰かの記憶留まり続けることは可能か
そうならばいいのだけど
塗りかえられるまで進むしかなくなる
すべてに共通の美をインストールされ楽になるまで

うさぎの闊歩する空で
彼らの美を分け与えられていた
与えられたものはあまりにも美しく、輝かしく
世界を拒絶するには十分で
拒否の跡に苦しむしかなく

どうしてもと乞われて
美を分け与えた
それはとても安く売れて
わたくしの最も大切なものもそのような扱いなのだと知り
一層悲しくなった
前から悲しんでいた事が何かは知っているでしょう

知っていたのに何をするの

竹林にまぎれる姫の錦を
なでさすり、ひとときの美しさとは
何かを理解した

ただひとときあれば十分で
そのひとときで姫の吐息を頂戴し
至福の事とした

ああ、わたくしの大切な美よ
生きる指標よ
そのままでいておくれ


自由詩 うつくしさ Copyright 日々野いずる 2015-10-25 18:33:48
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