もえるうみ
あおい満月

私はさかなをかく。
私はさかなはかかない。
さかなのなかを私はかく。
さかなを支える骨の内部を流れる
熱い海の流れを。



塩焼きにされた秋刀魚にかぶりつく、
がりり、
ちぎれる骨から、
海を繋ぐ細い管が、
落ちてくる。
私たちの身体の骨も
こんなふうに、
海を繋ぐ管が通っているのだろうか。
嘗ては母親と繋がっていた私だけの海と。

**

内視鏡が喉から、
内蔵の暗闇に下りていく。
画面を覗くと、
海が燃えている。
花よりも赤く。
細胞の壁という壁には、
花に喰われた白い孔が、
ひらひらひらひら、
手を振っている。

***

空に孔が空いて、
雨が地上に迷い込む。
オブラートを被った月は、
横顔を向けながら、
卵を孕む。
私の手のひらから
孔が見える。
それは明日を占う鏡か、
過去に繋がる水面か。

私はさかなをかく。
私は人間というさかなをかく。
あなたの骨の内部も熱く赤く、
海が燃えている。



自由詩 もえるうみ Copyright あおい満月 2015-10-20 21:25:07
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