棄天使の地図
木立 悟






消えない泡と見えない泡が
手をつないで終わりを見ていた
おぼろな背中 光の蔽い
けだもののかたちの曇を見ていた


指を灯す指を絡め
指を照らす光を見ていた
歪ませることなく空を持ち上げ
幾重にも重なる虹を見ていた


夜と夜と夜のはざまに
棄てられた天使がつもりつづけて
夕べのかたちにかがやいてゆく
すべての方位を祝いながら


鈴と雨と羽の重なり
音は光に
光は音になりながら
陽の無い空を駆けまわる


確かに誰かのものだったのに
何の跡も無く漂う声の
ひとりひとりの行方を追い
つもりつづける羽を見つめる


街が生まれ 消える時間を
幾つも幾つも数えてきた
風の度に
舞う泡のなかで


標も無く 墓も無く
つもりつづけるものを踏みしめ
そこに無いのに在るものたちの
つなぎつづける手に触れてゆく
























自由詩 棄天使の地図 Copyright 木立 悟 2015-10-19 11:33:13
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