蜜柑
あおい満月

(さびしいと思うこと)

それももうなくなった。
皆、鏡の向こうにいってしまった。
だから、
これからは窓を開ける。
東の空の向こうが
赤く滲んでいる。
その赤い光をなぞり道を拓く。
一本の道の真ん中に石ころがある。
石ころの声を聴く。

(ここから先に、何が見える?)

あたたかな手のぬくもりを感じると
石ころが囁く。
夜のネオン街の迷路を
転ばぬようにといつも支えてくれたあの手を思い出す。
そう、あの手だ。
どうして、今まで…。
気がつかなかった
自分の浅はかさを後悔する。

唇を噛みしめると、
酸っぱい味がした。
熱が皮膚から溢れ出して、
帰宅中の総武線を下りから上りへと引き返す。

会いたくて、会いたくて、会いたくて、
繋がらない電話を握りしめる。
熱いものが、頬を伝う。
数分後、
掛かってきた電話に
私はあたたかな安堵で満たされていく。


自由詩 蜜柑 Copyright あおい満月 2015-10-18 13:38:07
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