◎瞑想
由木名緒美

透明な柵の中を回り続ける鼠には
幻覚的な麻酔の恍惚が必要
生態系を逸脱した個体を繋ぐ夢は
遥かなる進化の虹を跨ぐのだろうか

水を与えれば開く鑑賞物のように
出窓に愛でられること自体が存在証明であれば
予測は蔦の葉のように枝分かれするけれど
先端は絡みつく前に痩せ細り
昔日の憧憬を数える程の充足感で繋ぎ止めてしまう

風穴は嗤う
顔馴染みの倒錯が及ぼす日々の亀裂に
裂傷を創るには倦怠した皮膚が
免罪された平穏の泉に石を投げかける
鏡のように月影を映すその水面に手指を浸して
呼応する魂のささめきに耳を澄ませる

救いとしての 捨て値の水晶の健気な光
解けない謎に倦む夕べは
饒舌な偽物の漏らす溜息に真正を覆されることもある
不可避の問いは 放棄されるべき熱情の中で閃くもの
虚飾を捨てて逢着したい
かぼそい希望をよすがに苦悶を開花させたとしても
今宵、弦月はすがる視線をその星間へと深く巻き取っていく


自由詩 ◎瞑想 Copyright 由木名緒美 2015-10-18 00:19:43
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