銭湯
末下りょう



ゆ!


気合いの入ったコンクリの煙突は
夜な夜な夜を吸いこみながら
湯を沸かしてるっぽい


一日 一生懸命働いた疲れをきれいに洗いながすために
この町の人たちはここに集まる


はじかれた湯水を水色のタイルが受けながし
湯けむりのなかであふれる湯船を
ペンキ絵の富士山がどっしり見守っている


子どもたちが女風呂をのぞこうと
肩車をして蒙古斑がひらく
商店街の案内がついた鏡は曇り
ぼくは髪を洗い 歯を磨いて
隣りのおじさんのチンコと自分のチンコを比べる
股間を隠す族と隠さない族がいる
電気風呂に浸かり
からだのスカスカっぷりを思い知る
ぜんしんが電気で透きとおってくみたいだ
絞ったタオルを頭にのせて
今日も一日お疲れさん


脱衣場でのぼせた頭とからだを拭いて
扇風機にあたり 歯磨いちゃったけど
瓶のコーヒー牛乳を飲む
それにしてもやっぱり男の乳首ってこんなにいっぱい要るのだろうかと思ってしまう
まあ気持ちいからしょうがないけど
サンダルを突っかけて先に出る
いつものこと


洗いながされたからだのまま
ケロリン桶に入れた石鹸や歯ブラシ タオルを小脇に
夜の公園でブランコにゆれ
取り込まれるように
前後にながれて 光より速い一日
まだ乾かない髪はスロウに


この町の銭湯は
気合いの入ったコンクリの煙突から
夜な夜な夜を吸いこんで
湯を沸かしてるっぽい
夜のなかにあり 夜がなかにある


きみの風呂はだいたいながい
でもそれはいいこと
自分のからだを湯水できれいに洗いながすなんてとても美しい働きなのだから
少し湯冷めしてきた
歯磨いちゃったけど
帰りにコンビニでおでん買って
食べたいなと思う




自由詩 銭湯 Copyright 末下りょう 2015-10-12 01:13:15
notebook Home 戻る