浄化槽
ブルーベリー
毎月だったり3か月おきだったり冬は来なかったり
よくわからない頻度でそのバンはやってきて
5人と書かれた確認票にサインを強請ってくるので
私は大体黙って苗字を書く
/
テーブルから不要な灰皿をどかし
(私以外喫煙者だが私が主となったこの場では相応しくないものだ)
私は間を充分に取ったけれども、切り出さない彼に、それで、と言った。
「それで君はどうしたいの」
「どうって」
彼は落ち着かなく視線を少し彷徨わせた後で
揺れた思いを吐露した。
それは謝罪ではなく
彼の若芽の生え始めた木にナイフを突き付けられたという主旨であり
彼はとても憤慨していた。
(「それって犯罪じゃないですか?」)
視線をうろうろさせながら
そう幼い口調で言う
彼の
木は
とても威勢がよく
正直みんな期待していた
けれどその土壌に油を撒いたのは彼だった
ある日彼は汚すなと言われていた場所で
何も敷かず油をぶちまけてしまったのだ
彼は慌てて拭いたけれど、
罅割れ疵付く地面からふつふつと沸き立つものと流れ行く先を見れば
それがもう、沈まないのは、確かだった
溢れ出て、
「君は何を育てていたの」
私はやさしく彼の憤慨をひとつひとつ汲みあげて、ゆるめて、冷やす行為に専念した。
今時は環境破壊の観点からも色々と煩い。
他所様を汚したら、彼が握るウエスでは、
やさしくわらってそう言う
私は
ただの事務員で、
作業員でも指導員でもない。
だから一昨日まで何も言わなかった。
だけどそこを汚していけないのは知っていた。
彼だって何度だって言われていた。
でも私は確かに見ていた。
私は
/
お疲れ様でした、と頭を下げて車を見送った
確認票にはまだ5人と書かれていて
埋まる日は暫く来ないだろう、と思う
その作業を私は覗いたことはないのだけれど
イメージと違ってバンも作業員もいつもとても綺麗で何の臭いもしないので、
私はそれをファイルに、躊躇なくしまっている