空が落ちてる
阿ト理恵



すくってもすくっても水溜まりにうつった虹をすくいとれず、ぽたぽたとおちるのは汗と涙ばかり。最近、元気のないかあさんに見せてあげたかったのにとぼくは途方にくれ高い空をみあげた。もちろん虹はとっくに消えてしまって。だんだん薄まる空色に囲まれたぼくの輪郭が闇にとけていく頃、ぼくはあるアイデアを思いついたのでスキップしながら、うちにかえった。「なにかいいことあったの」と、かあさんがぼくの顔を覗きこむ。ぼくは「あした、かあさん、午後2時に裏庭のブランコのところで待ってて!」「なんで、午後2時なの」「あしたになれば、わかるよ!」だじゃれ好きなかあさんだから、きっと笑顔になるとぼくは思うんだ。それはね、簡単なことだった。水撒きをして虹をつくりのだ。だから、あした、なないろの空がおちてくることをぼくは祈るのさ





自由詩 空が落ちてる Copyright 阿ト理恵 2015-10-09 22:51:08
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