花を探します
小川麻由美

お願いがあるのです

私が着ている
裂け目と泥にまみれたこの服を
ハサミで切り裂いてください
フォンタナのキャンバスのように
時にはためらいながら
時には迷いなく切ってください

お願いがあるのです

皆様のおかげで
見事に薄汚れた布の断片ができました
私は内蔵まで震えるほど寒いです
私の震えは止まることを知らず
足は酷く痺れて痛んできました
足は浮腫で腫れあがっています

お願いがあるのです

今度は布の断片を
そこにある錆びた針とくすんだ糸で
時にはためらいながら
時には迷いなく縫ってください
私は寒さで震えています
私は寒さで小刻みに震えています

お願いがあるのです

私の肌が何色か指摘しないでください
私はこわばった手でマニキュアを
塗ります 何度も何度も 塗ります
色の話はマニキュアかゴーギャンに
とどめてください

お願いがあるのです

下痢で汚れたベッドでは安らげません
シーツだけでも取り替えてくれませんか?
全身 汚泥まみれなのかもしれません
脆弱な精神の私には もう難しいです
そう すでに難しいのです

お願いがあるのです

誰か私を助けてください
自分の事は自分でしなければいけない
それは こんな私でも気付いています
ロープを持って森林へ向かう
人々の行列には並びたくないのです

誰か私を助けてください
誰でもいいのです
誰か私を助けてください
誰か 誰か いませんか?

私が助かる事はないかもしれません
空虚に向かって叫ぶ私の
しゃがれた声に気付いてください
もし気付いたのであれば
その方向に一輪の花を投げてください
私は必死でその花を探します

私が存在する限り一生懸命探します
そう 必死で探します
せせら笑われても もがきながらでも
探します 探します

かすれた叫びが聞こえたら
私を思い出してください
そして一輪の花を空に投げてください
お願い致します


自由詩 花を探します Copyright 小川麻由美 2015-10-08 08:56:43
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