秋・反羽化
ただのみきや

十月の空 軽やかに
抜け落ちた天使の羽根
青へ青へと沈んで往った
解かれながら天の淵へと

いっせいに湧きかえる小さな羽虫たち
凝縮された生と死が充満した宇宙 裂くように
歩いて往く 衣に縋る有象無象
塵のように払い落して 廻り異なる神の如く

陽だまりにそっと置いた視線
枯れて往く夏草の その先には何もなく
割れた殻を脱ぎ切れず欹てるばかりの魂が
羽化するものに嫉妬する

十月の空 乾いて堕ちて
風に走る銀の細糸 おまえたちは渡って往く
陸の鯨は歌った 血の泡吹いて
沈む空はない 朽ちるに任せていた




                《秋・反羽化:2015年10月7日》









自由詩 秋・反羽化 Copyright ただのみきや 2015-10-07 21:44:56
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