晩餐会
為平 澪

パーティーには 有名な中華料理店が選ばれた
難しくて名前が覚えられないメニューたち
箸で触るだけで肉汁が溢れ出すシューマイ
自宅に独り私を待つ母に
到底食べさせてやれない、そのシューマイ

このシューマイを食べたら他のシューマイは食べられないわ、と
誰かが言った
このシューマイを食べたから 
私は当分高いシューマイは 食べなくてもいいと思った

地方都市の若い人は、私の作る「玉子掛け御飯」の話を笑った
その日の産みたての卵のことや 安い濃口醤油、 
地元のお米を砥いで御飯を釜炊きすることを珍しがった

(お客様が来たら鶏を潰すんです
(オスから殺すの、メスは卵を産めなくなってから・・・

笑っていなかった人、笑えなかった人は
たぶん、苦い醤油の味を知っている人
可愛がっていた鶏がお客さんのために 潰された人

御馳走は運ばれ続け 並び続けたけど
誰一人、「玉子掛け御飯」は 注文しない


自由詩 晩餐会 Copyright 為平 澪 2015-10-05 23:09:07
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