ウイルス
あおい満月

(声をきかせてくれないか)

誰かがこの肩に息を吹き掛ける。
鳴らないはずの電話が点滅する。
見えないナイフが
手のひらを追いかけてくる。

(話をきいてくれ)

声はなおもたたみかけてくる。

(もういい加減にして!)

私はカーテンを引きちぎり、
空間へ投げつける。
窓には大きな月明かりが、
にやり舌を滴ながら見つめている。
開け放った窓からの風にのって、
啜り泣きがきこえる。

(俺を愛していないのかい)

私ははっきりと意思を通す。

(愛していない)

姿も知らない、
声もきいたことがない、
文字だけの繋がりの相手を
愛していく自信などない。

私は窓を閉めて、
携帯電話の電源を切って放り投げた。



今もあの「彼」は、
孤独を共有する誰かを探しているのだろうか。
詐欺師とは、
影になって、
寂しさの背中にまとわりついてくる。
孤独の隙間に巣食うウイルス。


自由詩 ウイルス Copyright あおい満月 2015-10-05 21:18:42
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