ウイルス
あおい満月
(声をきかせてくれないか)
誰かがこの肩に息を吹き掛ける。
鳴らないはずの電話が点滅する。
見えないナイフが
手のひらを追いかけてくる。
(話をきいてくれ)
声はなおもたたみかけてくる。
(もういい加減にして!)
私はカーテンを引きちぎり、
空間へ投げつける。
窓には大きな月明かりが、
にやり舌を滴ながら見つめている。
開け放った窓からの風にのって、
啜り泣きがきこえる。
(俺を愛していないのかい)
私ははっきりと意思を通す。
(愛していない)
姿も知らない、
声もきいたことがない、
文字だけの繋がりの相手を
愛していく自信などない。
私は窓を閉めて、
携帯電話の電源を切って放り投げた。
*
今もあの「彼」は、
孤独を共有する誰かを探しているのだろうか。
詐欺師とは、
影になって、
寂しさの背中にまとわりついてくる。
孤独の隙間に巣食うウイルス。