描線
末下りょう
白 白い白 白い日
白い目と白い手を
白い夢の白い瞼を白に開き白い壁の白さに列なる白い花瓶に白い花の
白い髪に白く書きつけた白のかわりの白い手紙
白い名は白とは呼ばれずに
白い意識が白のような顔をして白い素足を白と見おろす
白に消毒する
白い匂いに白く沈む
白くもない白い記憶
すべてはこともなげに 一切の白さを明かさない
白い体を白になるまで洗い白を流しては白い息が白さにこぼれる
白む死に白に縫合された
白い感情の白い繭の
白い柔らかさに
白く依存したまま
白を死ぬことから
白にとり残された白いぼくのまえに
白くなるきみの白い声が白に白く痕跡を留めて
白い旋風を白と回転させ 白に白さが巻きつく
白く使うもののほかに白いぼくの白いものはなにもなく
白くなるぼくの白いような白が
白い言葉の側からの白い笑いそのもののように
白い窓辺に
白くそよいでいる
白はすべての色の影 世界の紙切れに
夜の白は 光りの足跡
白にわずかに残された空の白が
白に埋まるとき
ここから白が
白に 消滅する
そのとき ぼくは黒で縁取り
そこにいまにも崩れそうなきみの輪郭をみいだしたとしても
きっと強く抱きしめようとする