夜釣り
春日線香

魚を釣りに行きましょうと
手を引かれて行く
氷のように冷たい手である
連れてこられた川辺には
沢山の人がすでに釣りを始めていて
思い思いに竿を上げ下げしている
自分もどこからか
骨のような細い竿を差し出され
これであなたの両親を釣るのです
この、深みのところにいますから
そう言われるままに糸を垂れて
釣れるのを待っている
波ひとつない川面を見ていると
ひとりでに涙がこぼれてきて
父と母は今どのあたりにいるのだろうか
濡れた頬がただただ寒かった


自由詩 夜釣り Copyright 春日線香 2015-10-01 22:00:48
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