愁思
葉leaf




地上からほかのどこかに通じる
風通しの良い扉が一斉に閉じると
秋の始まりだ
秋は閉ざされながら熟していく
密度の高まった空気と光と音楽
みな緩やかに撹拌され混ざり合いながら
ひたすら完成へと昇っていく
秋は創作の完成を目指すきわめて芸術的な季節だ

果物が熟するように秋に病んだ
病むことが一つの成熟であるかのように
秋はただざわめいているが
何一つ私に届かない
ただ秋の昂進のように病は高まって行き
秋からの逸脱のように病から治癒した
病は一つの実りであり
治癒して華々しく散っていく実りである

秋の夜に風が立つ
秋の稠密な結晶がどこかで狂い
分子を組み直すときに発生する風である
秋の夜
結晶はあらゆる角度から闇に侵入され
その整合性を試される
秋の結晶は均衡からわずかに狂い続け
その度に侵入された闇によって解体されるのだ
解体に伴う風に雨粒はその形を正される




自由詩 愁思 Copyright 葉leaf 2015-10-01 18:52:27
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