狂犬
ふるる

日めくりを引きむしってこの年を終わらせたとしても
眼前の巨鳥は微動だにしない
獲物が動く瞬間まで瞬きすら

木の実が散らばる穏やかな土の道に
名付けられない子供たちの影がしゃがんでしみついている
肩に手を置くすべはない
あったとしても跳ね除けられる

墜落したのは銀の乗り物か
別の何か
何かと誤魔化されるほどもう幼くはない指が黒く染まりはじめ
溺れる子供たちに投げ与えられたものは
激しい奪い合いのすえ跡形もない

崩れかけた家を補強するために腐った木ぎれが次々に打ち付けられる
都市は自らの愚劣に卒倒する人々で溢れ
帰路は遥か遠く遠くまで伸び続ける

明るく楽し気に交差点を渡る君よ
笑いながら波間に飛び込む君よ

君は御することができると言うのか

非情を叫ぶ号外で切った指の痛みを
無言の喉から飛び出す狂犬を






自由詩 狂犬 Copyright ふるる 2015-09-30 12:38:59
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